ウェアラブル【Wearable】

  ウェアラブル・コンピュータという用語があるために、ウェアラブルとは「身体に装備化する」という意味になっている。1992年にマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボのカンファレンスにて、コンピュータの進化する形態用語として登場してきた言葉というのが、一般的な語源の解釈になっている。しかし、情報機器のあるべき1つの形態として、身体そのものや身体に付ける衣服に何らかのモノを装置化するという意味において、もともとは、心臓のペースメーカーが、身体の内部に埋め込まれるということから、「ウェラブル」という概念は発想された。したがって、この言葉は、情報機器に止まらず、人間の身体性との距離感を実体的に捉える概念として考えることができる。 身体に付ける、という意味からは、人類は、装身具、腕時計、メガネなどがこれまではウェラブルなモノであったために、情報機器もそのコンテキストのままに、指輪、イヤリング、ブレスレット、腕時計、ヘッドマウントディスプレイへと、進化形的な可能性として、考慮される概念に変更されているだけである。 が、身体そのものに新たな機能性のあるテクノロジーを装備化や装置化するというところまで、その意味の拡大を試みることができると考えるべきである。まず、身体内部へ機器を装着することから、身体に対する空間概念として象徴的な概念化の可能性を発見していく課題的な用語にしていくことができるのではないのだろうか。その課題概念としてこの言葉を熟考すれば、人間の身体論と技術との適合性は、ロボティクスから ナノテクノロジーでの人工臓器までを評価する感性工学の用語へと定義を厳密化していまなければならないと考える。また、対象化する空間と身体論との関係概念として、この言葉の意味性を具現化した空間設計用語にまで発展させていくことができる。予知的な定義を試みるとするなら、身体に適合する装着性能のある技術である。   

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