本来のノイズは、信号(シグナル)を形成する音情報と、雑音という意味のノイズに分類される。ところが現在の情報理論では、信号の性質や内容に影響を与える恐れのあるデータの乱れをノイズとして限定している。このことからまぎれ込んだ無関係なデータを意味するようになった。一般的には、信号を純化するためには、ノイズを除去する必要がある。これを、ノイズリダクションと呼んでいる。例えば、音声データを分析して、ノイズ成分をカットする技術は一般的にもよく知られている。この音声データに混入したノイズをカットする際に、カットするノイズレベルを上げ過ぎると、ノイズ以外の音声データにも悪影響を与えることになるため、ノイズ成分のみを抽出する高度な技術が必要となる。ドルピー・ラボラトリーズが開発したドルビー・シリーズがアナログ用ノイズリダクションとしては有名であり、そのほか・東芝によるアドレスという技術などもあったが、デジタル技術の進展により、ノイズ性を皆無とするシグナルが現在は実現された。さて、デザインにおけるノイズというのは、隠喩的に、デザイン表現での「感性刺激値」としてとらえることができる。つまり、純化されたシグナル表現だけでは、息詰まるような印象やイメージとなる場合、そこに"ノイズ的な造形処理"が考慮されて構わないだろう。それは、デジタル表現でシグナルが純化されればされるほど、ゆらぎや癒しとして、ノイズそのものまでがデジタルによってつくり出せるというように、ノイズをコントロールするデザイン手法を見出す必要がある。