類が生存し、社会生活を営んでいくうえで、何らかのメディア(媒体)によって、隔たった間を結んだ意志のやりとりを行うことを通信と呼ぶ。通信のための技術は、それぞれの時代ごとに考案された方法や手段によって、より迅速な通信を目指してきた。 通信は、人間の五感の中でも、主として、視覚と聴覚によって、その様態が決定され、発展してきた。文字の発明以前には、絵画的な表現や縄の結び方など視覚的な伝達方法であった。その後、狼煙など、煙や火によって、より遠隔地までの間に中継という手続きを介在させる通信方法が進化していくことになった。聴覚による通信は、太鼓の音や鐘、ホラ貝などがメディアの原型である。 グーテンベルクの印刷技術によって、通信は大きく変貌することになった。これはマス・コミュニケーションを発達させる原点になった。そして、最も通信技術が変革されていくのは、1837年のモールス信号の発明と、1876年のベルによる電話の発明であり、さらに、放送技術としてのラジオやテレビというメディアの登場が通信の形式をさらに進化させた。その内容と影響力は、社会や政治のシステムまで変貌させることになっていく。 そして、通信衝星によるネットワーク化や、パーソナルコンピュータの登場、1993年の米国・クリントン政権による情報スーパーハイウェイ構想などによって、世界の通信環境は大変革を遂げることとなった。特に、インターネットは情報革命の産物として、その影響力は計り知れず、世界的な通信の制度から倫理観に至るまでの変容を余儀なくしていると言っても過言ではない。情報漏洩によるプライバシー保護の問題や情報格差など、新たな世界的な社会問題が発生してきているのである。 デザインにとっては、通信におけるコミュニケーションデザインや情報デザイン、あるいはデザイン情報という情報の創作や編集、管理などが新たなデザイン対象になってきている。