ナショナリズム【Nationalism】

  ナショナリズムとは、あるネーション(国家)やある民族が統一、独立、そして発展を目標として、構成員の意識をその目標へ向かわせる思想または運動のことである。訳語としては、国家主義、国民主義、民族主義というのが温厚な印象の語感として一般的である。また、目標を達成するために強い意識統一や運動の強固さを求めるという意味の訳語として国粋主義があり、これはイデオロギー的で特質な語である。このように多様な語感の印象があるのは、この言葉の意味が、国家あるいは民族の構成員ひとりひとりの感情や生活感覚に根差しているからだと考えることができる。また一方で、構成員集団が共有するきわめて具体的な政策やその表現という意味では、それは構成員個人よりも構成員集団の国際的な存在意識としての主張に繋がる。それは個人=自己を国民性や民族性に同一化することによって形成される確信と感情の統合性や一貫性のある主義となる。この共有性の確保を、ナショナル・アイデンティティと定義する。自己とネーションを同一化するとき、その同一化の自覚を民族意識と呼ぶ。この意識による運動は、国民的(民族的)伝統、国民的利益、国民的安全、国民的使命などとしてアイデンティティの確認へと繋がり、自己認識の大きな契機になり得る。 しかし、必ずしも、国民的認証や民族的な自覚がそのままナショナリズムの担い手となるということにはならない。ネーションの一員であることの自覚をうながす最も基本的なものは、言語の共有である。これは同一言語といって、方言に対しては標準語が、多言語国家では公用語が定められることになる。そして、言語を通して、異文化との差異性を確認することで、ネーションとしての制度性が構築されることになる。その言語による制度を他のネーションからの圧迫や支配によって破壊されるとき、必ずナショナリズムは、イデオロギーとして国粋主義的な様相へと変貌する。世界の歴史はその文脈を明確に示している。デザインにとって、ナショナリズムは、伝統文化や生活様式として、異文化との差異性を認識し、さらに敬意を表すための手法になることが肝要だと確信する。   

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