ミュージアム【Musium】

  美術館や博物館といった、美術品などを収集し、整理し、陳列、展示する機関や建築物をミュージアムと呼ぶ。ミュージアム(museum)とは、諸学芸を司っていたギリシャの9人の女神たちムーサイ(Mousai)に捧げられた聖域を意味するムセイオン(Mouseion)に由来すると言われている。しかし、実際のところムーサイには詩や音楽や舞踏などを司る女神は存在するが、美術の女神は存在しなかった。
 紀元前3世紀にエジプトのプトレマイオス1世によってアレクサンドリアに建てられたムセイオンが博物館や美術館の起源であると言われている。これは諸学芸の研究機関的なものであり、今日のミュージアムの原型の1つである。歴史を経て、美術館や博物館は、戦争による戦利品を誇示する権力者の施設となり、収集品の価値を決定する制度の場となっていった。
 現代では、デザインされたモノ、それがアノニマスなデザインであっても、その価値がミュージアムによって決定され、収蔵されるようになってきている。デザイナーにとっても、デザイン賞とともに、ミュージアムでの永久収蔵は、デザイン価値の公準となっているのだ。そして世界各地でデザインセンターとともにデザインミュージアムがつくられるようになってきているが、これには2つの意味があると私は認識している。まず1つは、デザインされたモノの価値を社会的に公認する制度を確立しようという動きであり、博物館的な歴史的証言物として保存することである。さらに、もう1つは、消費社会でのデザインを歴史的かつ文化的価値観で見極め、時代的表現物として収蔵し、将来の研究対象として保存するということである。こうしたことは、まさしく、デザインとは日常性や民衆の生活感覚を反映する営為であることを、ミュージアムという制度の下で認識され始めている証拠である。

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