ある一定の地域で何らかの人間関係が成立している社会のことを意味している。場所的な地域特性よりも、その場の人間関係に重心を置いた場合には、「地縁社会」とも呼ばれることがある。しかし現代では、こうした人間関係が希薄になりつつあることから、むしろ、土地的、場所的な区切りでの、ある特性や特質で取り囲まれる地域内に営まれている社会を地域社会と呼ぶことになっている。 場所的な地域に対して、何らかの特徴づけを行うことを、地域開発と呼ぶ。そして、その開発のためのデザインや計画のなかで、その地域に環境としての方向づけをし、その方向にそぐうようなコミュニティとしての人間関係のあり方までが、計画やデザインの対象になっている。 常套句となっている「地方の時代」や「コミュニティづくり」というスローガンは、かねてからの地縁社会におけるような人間関係が崩壊してきたことへの抵抗運動という見方もできる。地域産業とは、地域社会での経済活動であり、かつては、地縁による人間関係を母体にした生産活動が成立し、その利益配分までもが、地縁関係に基づいていた。しかし今では、この生産活動と消費社会との相関関係が、都市社会との関わりのなかで失われてしまった。現代では、より豊かな生活環境のためには、郷愁感を超えたところでの、新たな地域開発による、これまでとは異なる地域社会の建設が必要であるという、社会的な要望が高まりつつある。1970年代にドイツの思想家、E.F.シューマッハーによって提唱された「small is beautiful」という考え方は、そのきっかけであったと言えるだろう。また、この提唱以上に、現代では、環境破壊とネットワーク社会との関係の中で、地域社会の新しいあり方が希求されており、それは明らかにデザインの対象となる。 そこで、デザイン対象としての地域社会のテーマは、情報化とともに自然保全や自然保護、人間の健康なども含めて、もう一度、人が集まり生活する場、つまり集落としての地域性をデザインでき得るかということである。