機械【machine】

  機械という言葉は、「器械」からはじまる。「器」は楽器であり、「機」は武器を意味していた。「機械」という文字の表現は、1874年以降と言われている。machineは、ギリシア語のメカネからラテン語のマキナになり、近代語になっている。古代ギリシアでは数学者のヘロンが、「てこ、ろくろ、くさび、ねじ、滑車」を、一定の力によって重量物を動かすことができるメカネと呼び、さらにこれらを五大器械と呼んだ。以後、機械と道具の違いは、この五大器械の歴史的な観点で定義づけることができるようになった。 最も伝統的な機械の定義は、「機械とは、抵抗を有する物体の組み合わせであって、それによって自然界の提供する各種の力学的な力に一定の運動をさせるよう、作業を強制し得る配置を持ったモノ」というドイツの工学者、フランツ・リューローの規定がある。しかし、この機械概念は、電気制御や情報処理機械の登場により、まったく変貌せざるを得なくなっている。さらには化学反応装置やそのシステム化などの手段も機械という定義の領域に入れられた。 問題は、このような機械体型の中での人間の役割である。最初は人間が機械の動力も制御も担うことができた。しかし次に、原動力の開発と実現によって、もっぱら制御が人間の仕事になり、三段目には、制御の機械化を監視や保守するという極めて単調な作業になってしまった。それは、人間の作業そのものが機械的であるという傾向になる。そうなれば人間の機械化という結果に対して、人間らしさの復権が求められるのは当然だ。機械に対する人間のあり方でありさらに重要かつ緊急的な問題は、社会システムそのものの機械化を、哲学的、倫理的、政治的に解決することが、機械化または進化する機械と人間との関係改善として期待されているわけだ。この期待に、デザインは、人間と機械から、今では、マン・マシン・インターフェイスでのインタラクション性を提案し具現化することが要請されている。

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