「環境」とは、人々が日々の暮らしを維持していく条件の、全体的な結びつきや、その状況、状態を意味する。人間だけが主体ではなく、地球上のあらゆる生物は、その生命を維持し、種を存続させてゆくために、必要不可欠な活動源と、活動の広がりを場として保持している。その場には、大気や日照などの気候条件が食物連鎖として成立している。そうした自然な場との関連性の中で、人間の暮らしと営みを、生活活動の全体的な関係として、「環境」という概念でとらえている。 これに対して、「生活環境」とは、特に人間を主体にした暮らしの場や状況に傾斜した意味性を持っている。ここでいう暮らしとは、個人的な生活様式でなく、むしろ、社会環境や時代環境によって大きく影響や感化されている慣習、精度、風俗、常識によって、その環境条件が構造化されていると考えるべきである。それはすでに自然の条件の場というよりは、すべからく人工的に制御された場ということになる。この場合の制御とは、人間が政治的、経済的、社会的、時代的なコントロールかでの生活様式を選択することで、自ずと個人的なライフスタイルが決定されるという意味であるといっても過言ではない。 その環境条件を理想化するには、デザインによる理想的な環境作りが必須である。人間の個人的な近隣環境だけにとどまらず、より広域的、地球環境的で国際的な公共性や、国際的な制度、それからグローバルスタンダードとして、世界的なコンセンサスとなるように、“生活者としての地球人”という思想の場の構築までがデザイン対象となる。安全性、健康性、利便性、快適性、平和性がデザインによって具現化されることを目標にした生活環境のあり方が課題になっているということである。 生活環境は、自然環境・生産労働環境・福祉医療環境・教育文化環境・都市(農村)環境という分野を統合化し、統括する環境という意識環境であると言うこともできる。