くすりのことであり、内服する医薬品である。外用薬、つまり皮膚に塗ったり、貼るものとは区別される。くすりと呼ばれるものには、医薬品のほか、化学薬品、農薬や薬剤などが含まれる。薬剤とは、くすりを調合したものを指す。化学薬品は文字通り、酸類、塩基類、石油系化合物を工業化したものであり、試薬品なども化学薬品である。
薬品は、文明技術の大きな成果である。それは経済的な進歩をもたらし、政治的にも、例えば生物兵器という武器に用いられるなど軍事的な問題になっている。先進国において製薬は大きな産業である。ところが、多くの発展途上国は薬品の恩恵から隔絶されている。先進国では、健康幻想が蔓延し、その結果として、単なる対処療法や臨床的な運用に止まらず、健康保全や予防医療にはもちろん、美容にまでくすりの効用が求められている。こうした場合には、医薬部外品や保健機能食品と呼ばれ、それらが市場でブームになるような傾向がますます大きくなっている。にもかかわらず、前述したように、発展途上国においては、特に子供たちに対しての、また自然災害時の救援や紛争地帯での究明のための医薬品不足が大きな問題となっている。製薬産業は、特に創薬に対する特許に絡んで、国家力に直結していることは明らかである。
デザインにとっては2つの見方を提示しておきたい。1つは、薬品には「効用」いう成果表現がある。これは、「機能」や「性能」とは異なる観点からの定義である。デザインにおいても、デザインの「効用」を定義できるものと考える。もう1つは、薬品のパッケージやその表現デザインを一新することである。それは、これまでの単なるグラフィックデザインではない。薬品表示の新たなインタラクションデザイン、さらに薬品の造形にまでデザインを適用することが重要である。