1881年の井上哲次郎による『哲学字訳語彙』により、dualismの訳語として定着した。一般的には、宗教的な多元論の一種から派生している。実在性を考察する際に、相反する2つのものを対峙させながら論証する宗教的な思考論である。原典は、英国の東洋学者トーマス・ハイドが『古代ペルシア人の宗教の歴史』(1700)で、善と悪を相対的な原理かつ永久に対立する宗教体系として、この言葉を使ったことに始まる。その後、宗教用語としては P.ベールの『歴史批評事典』(1702)の「ゾロアスター」の項から、やがては、ライプニッツの『弁神論』(1710)に受け継がれた。これを哲学用語としたのは C. ウォルフである。ところが、こうした哲学的な見方は、プラトンにまで遡ることができる。イデア界(英知界)と感性界(現象界)は二元論である。以後、アリストテレスから デカルトの精神と物体(身体)、そしてカントの精神(主観)と物体(客観)へと繋がっていく。二元論は二元的対立によって変化の過程を説明するが、対立の根源を明確にしようとすれば、その過程で、必ず、一元論を要請することになる。また一元論は本質的にその要素同士の対決において二元論への現実的な変容を免れぬ場合がある。 デザイン手法では、特にコンセプト構築の段階での、基本的かつ常套的な論理構成として二元論が有効である。したがって、デザインにおいて、この二元論なるものを、宗教的、哲学的にデザイン学識化するべきだと提案しておきたい。多元論的なデザインの評価による、その効用・効果の伝達に不可能が生じた場合には、二元論的な理論武装はきわめて有効となると考える。