ギリシア語のdiaは、「通過する、完全な(に)、分離する」などの原意を持ち、ギリシア語系の学術用語の接頭辞として用いられる。その展開語の1つであるdianogosisは、「他と区別する」という本来の意味から派生して、「診断する、分類して記述する」という、より詳細な意味を獲得していく。同様に、本来のダイアグラムとは、幾何の定理や数学の論理などを示す線図や図式、図形のことであったが、後に構造図や略図、さらには一覧表など概略的な図表全般を示すようになった。 日本では主として、鉄道用語でダイヤと呼ばれている。これは、一定の路線の列車運行状況を表す図表のことである。縦軸に距離と駅、横軸に時刻をとり、列車のおりおりの位置を斜線で示すものだ。しかし、これはtimetableあるいはscheduleと呼ぶほうが正しい。ダイアグラムとは、列車の運行状況などのモノの動きではなく、論理や思考回路をより視覚的に図形化・図表化・図式化することを意味する。つまり、図表や図式、図譜、地図、図面など全般を包括する「図解」を指示している。 図解とは、はじめに観念的な思考を理論的に概論化し、その内容を視覚効果によって、より単純化し、理解される・解説できる図形化を図ることである。ダイアグラムとは、観念の構造的な表現や概念の構成的な表示によって、表・図表・図式・図譜・図面・地図など、すべての図解を指し示す名辞用語になっている。したがって、本来は、視覚的な記号や図形を駆使した、1つのグラフィカルな表現としてまとめることが求められてきた。しかし現在では、映像や動画によって表現したり、また視覚的だけでなく、認知可能な新しい形式や様式を持つダイアグラムが求められている。つまり、視覚だけに頼らず、触覚的であったり、行動を誘導するような仕掛けや構造を持つような、よりインターフェース的な、コミュニケーションの表示体系としてのダイアグラムの発明が求められている。従来の視覚的な表現を超える、“メタ・ダイアグラム”こそが、今後デザインされるべきダイアグラムであると考える。