本来、翻訳的には、五感で知覚する物や物体を意味する。その意味性から、思考の対象や目的、狙いなどに意味性は拡大していった。現代、術語的には、コンピュータ用語として最も頻繁に使用されるようになってきている。ここでは、その用語的意味を明確にしておきたい。つまり、コンピュータ上で知覚し認識するデータ形式を次のように用語定義することができる。データそのものとデータ操作する手続きをひとまとまりの単位として一体化したものをオブジェクトと呼ぶ。そうしたオブジェクトの組み合わせを記述するプログラミング技法において、プログラムの部分的な再利用がしやすくなるなどのメリット性を指向するとき、これをオブジェクト指向という。 代表的なオブジェクト指向言語には、C言語にオブジェクト指向的な拡張を施したC++言語や、サン・マイクロシステムズ社が開発した純粋なオブジェクト指向言語であるJava、ゼロックス社の開発したSmall Talk、ネクスト社(現在はアップルコンピュータ社の1部門)が自社のOSであるNeXT STEP向けアプリケーションソフト開発用に開発したC言語ベースのObjective-Cなどがある。これらは、ソフトウェアの操作手順よりも操作対象に重点を置くという指向性からオブジェクト指向というというわけだ。 関連するデータの集合と、それに対する手続き(メソッド)を「オブジェクト」と呼ばれる1つのまとまりとして管理し、その組み合わせによってソフトウェアを構築する。すでに存在するオブジェクトについては、利用に際してその内部構造や動作原理の詳細を知る必要はない。外部からメッセージを送れば、自動的にデータ処理機能を果たしてくれる。したがって、特に大規模なソフトウェア開発では有効な考え方であると言われている。データやその集合を現実世界の「モノ」になぞらえた考え方であることから、「オブジェクト」指向ということだ。何らかの「データ」と、それを操作するための「メソッド」の組み合わせが「オブジェクト」であると言っていいだろう。