図【figure】

  「図」とは、狭い枠を作り、その中の領域を地としていっぱいに何らかのシンボルとなる図形を押し込めて描く、という意味を持っている。また、「図る」とは「難きを計画する」という古典的な意味がある。それは何事かを謀るということでもある。「図解=diagram」とは、図によって解説や解釈すること、さらには図で表現されることによって、理解することができるということである。つまり、図で解説することと、図で理解するということ、さらに図で表現することと、表現されている図ということ、それらの両義性によって、何事かを画策するという意味に繋がっている。 思考をシンボル化させて表現するということは、思考そのものを図形化することではなく、思考をその図形によって拡大させることである。図を分類すると、「表(table)」「図表(graph)」「図式(chart)」「図譜(score)」「図解(illustration)」「図面(draft)」「地図(map)」という形式がある。どの形式であっても、それぞれが図によって表現されていることで、分類や経緯、文脈、指標となる軸が設定され、解説や理解がよりしやすくなる。表は、図化するための基本的な分類と配置関係を表している。図表は、円グラフや棒グラフ、そして折れ線グラフなどのように、分類されたデータの対応関係が比較検討しやすい。図式は、順序や経過の文脈的な流れを一読できる。図譜は、例えば楽譜を思い浮かべればわかりやすい。図解は要因化される要素が時間経過とともに表現され、極めて写実的な表現で図形化を図る表現である。 デザインにおいては、図形化とはまさしくサイン、つまり合図や信号化することであり、designの原意であるdo+signと同意であるとも言える。図はデザインによっては、表現の一形式であり、思考そのものの表現形態であると定義することができる。   

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