老化【aging】

  年齢の増加にともなう加齢現象を日常的な言葉として「老化」と呼ぶ。加齢現象は医学的鬼には4つの基準で定義されている。1)普遍性=生・命あるものすべてに起こる現象である。2)内在性=誕生・成長・老化・死という経過は個体すべてに同様に内在している。3)進行性=老化は変化していく過程として把握することができる。4)有害性=老化の結果、機能の低下を回避することはできず、外見上でもその程度を客観的に認識することができる。とくに、体重・身長など容姿の変化、頭髪・歯の脱落、皮膚状態、白内障などの症例となる変化は、その基礎を成す臓器萎縮=体重減少の進行による、生理機能の低下に起因している。いわゆる生体信=バイタルデータは、若年層の値から直線的に低下する。このバイタルデータで確認できる機能の低下は、生理的な予備能力(reserve capacity)の減退であり、結果、これは疾患を引き起こすことになる。老化による機能低下は死に至る経過である。こうした加齢現象は老化遺伝子として、医学的、物理生物学的に解明されつつある。また、機能の低下や適応性の破綻を意味する「老化」はレトリックとして、組織や機械、システム、さらには制度まで適用されている。つまり、“ライフスパンでのエイジング”という表現などである。わが国では、これまで世界的にも類を見ない高齢社会へと進んでいるが、ここにおいては「老化」という差別的表現を回避している。代わって「高齢化社会」あるいは「高齢社会」という表現があるが、この2つには決定的な差異があるにも関わらず、それが無視されていることを指摘しておきたい。「高齢化社会」=aging societyであり、「高齢社会」=aged societyである。この使い分けにおいてさえも、混乱をきたしているわが国の制度そのものが老化していると言っても過言ではない。いわゆるユニバーサルデザインも、この「高齢化社会」と「高齢社会」 の分別なく流入し、デザインの核心のごとく社会化してきたことは、デザイン界の「老化」あるいは「劣化」かもしれないと記述しておきたい。

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