手【hand】

  手とは、人間の定義を原意として四足動物の体の部位を示す言葉である。上肢全体を指すこともあれば、手首から指先までを言う場合もある。人間の手は、他の類人狭や高等霊長類に比べると、神経系の機能性と性能が際立って優れている。よって、「手業」や「手技」「手芸」、さらには、「上手」や「腕がいい」という表現があるように、体の器官を指示する語というだけでなく、文化的な用語にまでなっている。手法や手段、手間、手数、あるいは手練手管という具合に、事を行うための方法や技術、策略までを直喩的に表現する言葉になっているのである。   デザインにおいて、「手」の持つ意義は、当然ながら、手法や手技など文化的な意味、さらには統合的な意味との連関から考えていくべきだろう。特に、具体的なデザイン技法にとって、体の運動器官としての手との関係性を無視することができない。デザインにとって、手とはまず、手描きのスケッチや、手の触覚での感覚的な形態認識、その認識をイマジネーションでどこまで追い求め、再現し、触覚的に感覚の中で復元できるかということである。今日のデザイン作業の環境下では、コンピュータの運用によって、手を使う手法や手段が崩壊している。これは重大な問題であり、デザインの結果も悪い方向に作用していることが少なくない。また、デザイン対象そのものも、手で使うモノが激減している。  手(hand)には、英語あるいは独語では「握る装置」という原義があり、そこから創る・所有する・支配するというような意味に派生している。つまり、人間にとって、「手」とは、器官という機能を超越した、文化を文字通り創り出すものという意味に繋がっていった。そして、その創造を実現するのが、デザインという手がかりであり、デザインという手法だと考えたい。   

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