バーチャル【Virtual】

  この言葉はバーチャルリアリティ=仮想現実という言葉とともに日本語として定着している。Virtualとはラテン語に由来している。Viとは、Vital=生命力や力のViであり、「2つの」を意味するviでもある。そこから、「実際的」「実質的」「事実的」という意味だけではなく、それらとは相反する「虚像の」という意味をも有することとなった。 さらにコンピュータの出現によって、虚像が ”仮想的な現実感”を得ることとなり、コンピュータの再現力の高度化とともに、感覚的にはその虚像感が喪失されることになっていった。つまり、仮想現実とは、技術の高度化によって、仮想のなかに強烈な印象度をつくり出し、仮想性を失わせるということである。現実感があたかも事実性や実質性を持つように増幅することで、仮想性は埋没し、現実と虚構が分別できなくなっていくのである。  このようにコンピュータの技術力は、バーチャル性よりもリアリティ性を明確にもたらす。とりわけ、コンピュータゲームの仮想性は、より現実感と重なっていくことになった。それは特に、仮想的現実感と実際的な現実感との区別や分別性を消失させてしまうという症例に繋がっている。バーチャルという言葉の本来の意味である「生命力」の弱さを引き起こしているのである。とりわけ、少年犯罪や、生命の軽視という社会風潮には、バーチャルリアリティ感覚のゲーム感覚が大きく影響しているという批判があるが、これは1つの時代病因と言えるかもしれない。しかし一方では、シミュレーション事例の研究精度を確実にするためには、仮想性をより高度にするデザイン開発が求められるものと判断せざるを得ない。   

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