デザイン用語というよりは、デザインコンセプトを表現する言葉として用いられる。基本的な翻訳をすれば、「本物の、真生な」という意味である。つまり、異論や余地のない確証されたモノを形容する言葉として使用されることが多い。では、デザインすることで、「本物」、あるいは「本物らしさ」というのはどういうことかを定義しておくべきだろう。一般的には、素材が本物だったり、作者本人であったり、作品が贋物ではないということになるわけだ。結局、理論的な言い方によって一言で済ませるとするならば、「二重否定できるモノ」ということになる。「偽物ではないモノ」、すなわち、偽物という要素が入っていれば、それは一次否定となる。その一次否定を二次的にも否定すること。否定をさらに否定することになる。つまり、「本物ではないモノ」とは、偽物ということになる。 デザインにおいて、「オーセンティックであること」というのは、「本物性や真正性であること」をどのようにデザイン対象で認識させるかということになっていく。デザインするモノに対して、そのデザイン価値の本物感の与え方を、テーマあるいはコンセプトとして訴求するということになるわけだ。したがって、例えば、ブランドを明示すれば、そのブランド製品、あるいはブランド商品としての本物ということになるわけだが、あえて、オーセンティックであるというコンセプトは、さらに、素材、機能、つくり手の理念によって、形態化されたときに、使い手が、確証された使用感・所有感を満足できるかということになる。結局、一品製作されたモノの本物らしさではなくて、量産されているいわば複製品・コピー品であるにもかかわらず、あえて、「本物感」が求められていることの人間的な幻想や欲望に関して熟考する言葉として、デザイナーの再考すべき課題表現語と考えたい。