デザインという営為のすべてにわたって、リーダーシップを取る行為である。リーダーシップ力をデザインに向けることと言えるだろう。しかし、デザインそのものがリーダーシップ性のある営為であることから、「デザインにおけるリーダーシップ性」という定義を二重にかつ複合的に考えて定義付けなければならない。 ディレクションには、通常3つの意味がある。まず、方向や方位を決定していくこと。次に、その傾向や動向を思想的に主導していくこと。そしてそのために、指示や指図、指導によって監督し管理することである。一般的にはデザインの対象やその領域に対して、デザイン力を総監督することがデザインディレクションと考えられる。しかし、ディレクションの3つの意味から、ディレクションする対象がデザインであるということになれば、どこまでがデザインディレクションであるべきかという再定義が必要になる。つまり、デザインマネジメントという運営・維持・管理から、デザインプロセスやデザイン開発、さらにはデザイン展開など、デザインを決定付けていくデザイン環境そのものを、思想的な面、さらには具体的なデザイン技法のあり方やデザイン決 定のための仕拗け・仕組み・仕上がりすべてに対しての統合的監督がデザインディレクションに求められているということである。広義にはデザインマネジメントやデザインプロデュースの役割とその定義を、デザインディレクションが担当するということでもある。 が、狭義には、マネジメントとプロデュースとを分担して、むしろデザインという創造的営為の統合的な監督という定義に絞ることも可能である。つまり、デザインディレクターとは、あるデザインの対象や領域のデザイン業務のなかでも、マネージャー的営為とプロデューサー的営為との分担を図りながら、マネジメントやプロデュースの対象そのものをデザイン決定に仕向けていく主役的存在であるということになる。そのためには、ディレクションというリーダーシップ能力をデザインそのものに発揮することがデザインディレクションだと定義することができる。