デザイン【Design】

  デザインには、100人のデザイナーがいれば100通りの定義があると言われる。なかでも、人類が道具を発明したり、図像によるコミュケーションを図ったり、住居や環境の構成を具現化したりという、太古からの何らかの構想を実現する営為活動そのものがすでにデザインであったと言われることがある。しかし、これは明確に誤りである。 なぜなら、デザインという営為によって、デザインする領域や対象を認識させること、すなわち見ることで理解できるかたちにしなければいけないからである。この見てわかるというのは、単に視覚的なことに止まっているわけではない。見るということは、感じ取るということも含んだ観念的な認識にまで及んでいる。 デザインの語源はラテン語のdesignareで、これは目印を付けて指示・表示するという意味である。そこからデザインは意匠と計画という2つの複合的な意味を持った。そして、計画・企画・設計と意匠・装飾・演出からなる複合的な行為として、戦略や策略、さらには陰謀や思考までを一言で表現できる言葉として使われるようになった。つまり、あまりにその意味が拡大して解釈されることとなり、デザイン対象や領域が、それぞれ固有のコードである規則や方法に基づいて、個々にデザインを再定義してしまうことになってしまった。そのために冒頭での一般的な誤りが発生したと結論できる。 それぞれのデザイン対象や領域から、デザインの再定義は、デザイン全体を定義するものではなく、部分の集合からの意味付けに他ならない。つまり、「デザインとは何か」ということから始まるデザインの定義は、デザインという言葉の普及とともに、その意味や定義が拡大し、その本質を拡散させてしまった。むしろ必要なのは、「結果的に何がデザインだったか」という視点である。デザインを必要とした対象や領域の問題の本質を、指示・表示し、目印を付けるという行為とその効用や効果によってデザインの意味性を読み取り、そこから何がデザインであったかという回帰的な解答が、デザインの真意であり、デザインの本質的定義に近接していると考える。   

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