テクスチャー【Texture】

  textureの略語でもあるtexは、ラテン語のtextus(織物)を語源とするとともに、繊維の糸の太さを表す単位である。糸の直径の測定がほとんど不可能なために、長さ1000mの質量を表す。このtexに動作や過程・存在を表す名詞語尾の-ureが付き、textureとなった。テクスチャーとは、織物の織り方の結果としての生地を意味する。そして、この生地という意味から派生して、自然物である樹木や石などの手触りとその感触という意味を獲得していく。さらにその表面的な感触を構成している組織や構造という意味まで含み、表面の材質感という抽象的な意味を持つに至った。材質感とは、まず視覚的な印象によって、触感的な印象を誘発することである。改めて対象を触覚的に確認することで、このテクスチャー(材質感)という意味を身体感覚から認識にまで昇華することになる。しかし、こうした感覚をテクスチャーという言葉で共有することは困難なことだ。つまり、語源であり、単位でもあるtexが、確実な重量と長さを媒介したように、感覚を成立させているのは何らかの経験や、例えば光の反射性であり、それらによって材質そのものをイメージし、そのイメージによって、観念的な認識を覚醒させていると考えられるからである。  デザインにおけるテクスチャーの設定や決定は、単なる外装での材質感の選定を超え、存在感や印象度を決定付けるものである。つまり、外装設計や外観が何らかの意味性を発信していなければならない。材質感としてのテクスチヤーの認識をもっと深化させるべきである。社会的な表皮性という意味での、ある種触覚的な感覚を誘発するようなテクスチャーの選定あるいは、新たなテクスチャーの創出がこれからの要素デザインの目標の1つであることは確かである。   

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