「作る」が素材を削り取るというようにマイナス的な方向での形態化を意味していたのに対して、「造る」という言葉は、醸造という言葉があるように、つくる過程に時間的な要素も含んでいる。酒や酢の醸造は時間を加味する加工方法である。すなわち、「造る」とは、さまざまな素材や材料を組み合わせたり、時間経過による変化や変質、変貌などを、すべてプラス的なものとするモノづくりを意味している。 製作と製造を比較し対照してみると、製造のほうが、さまざまな素材や材料を使い、そしてその工具や工程など加工が複雑である。歴史的にも、家内利手工業は、製作から製造へとモノづくりが進展してきた。やがて製造は生産という段階になり、産業革命に繋がっていく。そして製作・製造されたモノを製品と呼ぶ。また、「作る」という素材に対してマイナス的な作り方と、素材や材料を集合して「造る」というプラス的なモノづくりの両方を加工手法とすることを「造作」と呼ぶ。 素材が何も存在しないような砂漠やサバンナを持つ地域では、材料を運び込んで、空間を造り出すことになる。中東のモスクなどの建築空間は、その空間内部までがさまざまな色彩溢れるタイルで装飾され、過密なモノづくりが行われている。こうした「造る」というプラス方向を持った民族は、多種多様な材料を使ったモノづくりを行うのである。 デザインにおいては、その工程が複雑で、時間軸までが考慮されるような場合には、作るではなく、造るという表現が適切だと言える。