最初に、勝手という言葉には5つの意味があることを確認しておかねばならない。まず、台所という意味がある。さらに、様子や事情。便利さや便宜。生計や家計、暮らし向きなどの意味もある。そして弓を射るときの引き手という意味から発展して、自分の都合の良いように自由に振る舞うことや、わがままという意味もある。 こうした勝手の持つ意味との組み合わせから、使い勝手の評価の基準は、実際に使用した場合の使い具合そのものや、使用状況、利便性、さらには経済性との兼ね合いで成り立っている。つまり、デザインと機能性を一言で評価する言葉として用いられることが一般となっている。 デザインにおいては、ユーザビリティに対して、使い勝手という訳語を当てはめることができるが、この場合は、単純に便利度や便宜性という意味に集約されることが多い。しかし、使い勝手という評価語は、もっと実際的な用途との適合性や、使用性能そのものに対する問題解決の程度にまで立ち入った評価軸を持つ言葉だと考える。使い勝手がユーザビリティと異なるのは、使いこなしていくこと、すなわち使用するための経験を重ねていくことで、使い勝手そのものがユーザー自身によって高められていく可能性や自由度があるという点である。つまり、勝手気ままな使い方にまで適応するようなユーザビリティが必ずしも理想的なデザインによる機能性の完備ということではない。むしろ使用感覚を経験としていくうえで、その経験の質をより向上させることが、これからのデザインと使い勝手の関係づくりであると言えるのであり、ユーザビリティとは、その使い勝手の経験の質を高めていく機能性までを含んだ表現である。