日本語の「つくる」は、その表意、つまり漢字によって、明確な個々の意味の違いがある。「作る」とは、この漢字の象形的な意味として、人間が斧、つまり刃物を持っていることを象形化していることから、素材を切ったり削ったりすることで形態を生み出していくということである。素材を“マイナス化”することで、モノに形態を与えて「作り出す」という意味を持つ。例えば、工作とは、素材を刃物のような道具によって加工することでモノを作り出すということである。 日本は森林によって国土の大半が形成されており、空間を作り出すために、その森林を切り倒してきた。この自然環境そのものが、日本の造形文化の基本になっていると考えられる。つまり、書院づくりのように、より端正で省略された、できる限り無の状態に保持するという空間文化である。 また、「制作」と「製作」という2つの表現では、制作は簡単な道具を使い、作り手の個人性が表現できる作り方を示唆している。一方、製作は、工作や制作に比べて、素材との対応性をより複雑にした作り方を意味している。そして、制作、制作されたモノを作品という。したがって、個人的で、かつ素材と使う工具の単純さから、アーティストの作り方を意図する言葉に、一般的には制作や製作が使われる傾向があると言えるだろう。 デザインと「作る」との関係は、主にはデザイナー個人あるいはデザインサイドでのモノづくり、いわゆるデザインモデルやモックアップモデルをデザイナーがつくる場合には、この制作や製作という言葉が適合していると言えるだろう。