日本では、古来、「知る・悟る」という意味だったが、西周がJ.ヘーブンの『心理学』を翻訳するに際して、英語のperceptionやドイツ語wahrnehmungの訳語として定着させた。perceptionとは「完全に・すっかり」という意味の接頭語perと、ラテン語で「掴む」を意味するcapereからなる。知覚とは、五感によって気づく・わかるというような意味性を持ち、外在する対象を把捉するときに、感覚を介して認識することを指す。この感覚的な認識は、知的な思考や推理とは大別できるが、単なる感覚とも区別されている。つまり、知覚とは、単なる対象からの刺激が変容した感覚ではなく、対象を認知する際に、対象との直接的で接触的な「直観知」をも含んでいるということである。五感で認識する直截的な感覚を含みながらも、それは私たち自身の内的な状態や意識そのものの把握でもあり、言わば内部知覚と呼ばれる「感覚知」である。フッサールやメルロ=ポンティが、内部知覚による本源的な知を分析しており、知覚とは具体的な意味のある意識的な経験で、対象との関係・関与の結果としての、ある種の刺激パターンであると考えられている。つまり、感覚と知覚との区別が曖昧であると言うこともでき、知覚は、生理的な反応と心理的な反応の影響を強く受けているのである。 デザインにおいては、認知(認識)と運動のメカニズムの研究である認知科学において、知覚の問題が取り上げられている。重要な用語として、今後デザイン学の一領域に取り込んでいく必要がある。例えば、2.5次元スケッチを提唱したデビッド・マーの研究なども1つの参考例になるだろう。デザインと知覚の関係は、知覚の恒常性に対する情報を統合するために、新しい研究成果が求められている分野である。