芸術の定義は、歴史的には単なる美術や音楽にとどまらない。医学や神学までが芸術には含蓄されていた。また工学というのは、技術の総合学として、科学による人間の知性を技術化する学問と概説することができる。そこで、芸術工学とは、芸術と工学を融合したものであるという定義では、極めて表層的な定義に終止しているだけになる。 科学的な根拠による技能や技術の総合学としての工学に対して、この総合学に芸術という学際性を組み込むことや摺り合わせていくことの意義や意味がそのまま、芸術工学であり、工学的芸術という相互的な学際を表すと考える。英語では、ずばり、アート&テクノロジーということになるが、アートもテクノロジーも元来は、同様な内容を包含していた。むしろ、アートとテクノロジーが分科した分科学をサイエンスと総称したにすぎない。したがって、芸術と工学を学際性で再度結びつけようというのは、時代的、社会的、世界観的な要請であると考えるべきだろう。 つまり、工学的に裏付けられた技術が高密度になり、人間と技術の関係が複雑になるとともに、不透明でありかつ人間生活と技術との剥離が、環境破壊を生み、技術信頼を失わせている。こうした問題に対して、芸術的な解決が図れるという問題意識が、芸術と工学の学際性を希求したわけである。 そこで、芸術をデザインとし、工学をアーキテクチュアとすることで、芸術工学の学際化をコンバージェンス化する事ができる。デザイン+アーキテクチュアとは、いわゆるさまざまな意味に拡大するデザインではなくて、構想であり、アーキテクチュアは建築を意味せず、構築である。すなわち、構想と構築という新たな理念や思想、技術、技能を学際的にしていく感性的かつ知性的領域学として、芸術工学を定義づけることができると考えている。その目標と目的は、すべからく、計画であり設計という手法によって、社会的な実務学になることができると確信している。