見た目、顔立ち、容貌、器量という訳語が当てはまる。ルックスの良さが、例えば、俳優やタレントの重要な要素となっている。人間は「見た目で判断される」というきわめて安易な評価軸があるが、これは第一印象を決定する確信をまさに突いているとも言える。昨今の「イケメン」という、若い男性などへの呼び名は、かつては「ルックスがいい」という言い方であった。つまり、ルックスという言葉は限りなく表面的な見た目と言う意味で使われてきた。しかし、容貌や器量という言葉には、そうした単純なルックスという訳語よりも、より深い意味がある。女性に対する「器量良し」という言い方があるが、器量とは、その人物の心の深さや、人格の質そのものにまで及ぶ言葉である。例えば、「あの人は器量がある」というのは、心の大きさや度量の深さを敬愛する表現であり、ただ単に、見た目という訳ではない。同様に容貌とは外見の事であるが、容貌の容とは、内容と同様で、心の「かたちや精神力の強さ、大きさを本来は意味していると考えれば、より深い意味を持つ言葉なのではないだろうか。
デザインにおいては、「デザインは外観づくり=見た目の良さ、印象づくり」という誤解が今も続いている。しかし、すべてのデザイナーは、これが大きな誤解であることを認識していると思う。デザインの評価に置いて、見た目としてのルックスという言葉にはあまりにも重量感がなく、使うべきではないとさえ考える。容貌や器量こそ、デザインにおける思想的あるいは意図的な、深度ある内実性や意味を表しているものと考える。デザインを語る上では、ルックスを容貌や器量という日本語に変換したいものである。あえてルックスの良いデザインとは何かを定義するのであれば、真に、美と義と善を包み込んだ外観であると断言しておきたい。