相等性や差異性の対極にある言葉である。対象がどのような類=クラスのあるかという近接性を判別することで、類似性の有無の判断根拠ができる。類似性は、対象を形式と内容に峻別して、いわゆる「似ている・似ていない」という判断基準にも繋がる一応の目安となっている。数学的な検証としては、非負性・反射性・対称性という限定的な評価判断がある。この3つの検証は、類=クラスを比較検討する意味においては、きわめて応用価値が高く、類似性の峻別的な述語であると考えることができる。類似性は、簡潔に言えば、対象間の属性の比較によって決定されるものである。一瞬だけ見て、「似ている」となれば、類似性があるという判断に即なり得る。しかし、対象のそれぞれの属性の比較検討による客観的な判断まで必要とされるのであれば、一瞬の判断による類似性の根拠は成り立ちにくい。そこで、類似性測度という親近性を客観的に検証する方法が生まれた。これは、ある集合の中での「似ている」という類似性と「似ていない」という非類似性を感覚的に結論化する、データやクラスター分析に基づく測度設定である。
デザインにとって、類似性はオリジナリティの有無に繋がっている。意匠権の設定と確認は類似性の有無の判定によるものであり、知財権という精度は、意匠としてのデザインの権利保全を目指した類似性の評価であると考えられる。デザイナーにとって、「類似性がある」=「あれに似ている」とか、コピー商品、物真似という評価は、自身の存在理由そのものに関わってくる。かつて、敗戦後、わが国では海外製品に類似したモノ=コピー品を輸出していた時代があった。こうした事態に対する国際的な指摘から、現在のグッドデザイン制度が生まれたということは、すでに過去の歴史となってしまった。しかし現在、途上国での類似品の氾濫は、知的財産権上の世界的な問題となっている。今、あらためて類似性とは何かという明確な定義が必要となっている。