リビドー 精神分析学の述語である。とりわけ、この述語を駆使したのがフロイトであったことから、この言葉は広く使われるようになったと考えられている。フロイトは、リビドーを性的欲求として、あらゆる無意識の真相にこれがあるとした。リビドーの原語はラテン語で羨望や欲望を意味しており、フロイトがそれを借用したといわれている。対して、ユングは生命の源泉、生きる為の欲求という定義を行った。私は、無意識な深層にある欲望や欲求が、精神活動を根本に支える力であるという、フロイトの認識に注目したい。リビドーはまた、物理化学的述語でもあり、エネルギー論において使われることから、人間の本能の根幹にある性的エネルギー論へと展開した。
フロイトのリビドー発達(性的心理的発達)理論は、口唇期・肛門期や、男根期、そして潜在期などによって。各自の個性、さらには性癖にまで影響している。したがって、性感帯による調節的な感覚が、深層意識のなかでは、心的なエネルギーとして形成される。それらは、鬱積すれば、不安や緊張になり、欲求挫折に繋がることもある。しかし、こうした不安や緊張が芸術表現に結びつくとも言われている。
デザイン、あるいはデザイナーのリビドーは、デザイン対象が理想手技や調和・秩序を志向する場合には、フロイトの言うところの性的エネルギー論での抑圧的、病状的な表現や創造の動機になるわけにはいかない。むしろ、そうした内向性的な空想や妄想から解放された、白日夢的な想像力であると再定義するべきではないかと思う。つまり、形態学=モルフォロジー(白日夢の神、モルフェーに由来する)とリビドーの間の整合性を再考察することで、デザイナーの空想力や想像力が発揮されると私は考える。