立体とは、その原型である立方体の厳密性や完全性をいわば曖昧にした形態である。三次元空間でのさまざまな形態を表し、幅・高さ・長さによって定義することができる。いくつかの平面や曲面によって囲まれた立体は多面体ともいう。立方体という完全で厳密な形態を定義づけたのはプラトンであったと言われている。改めて定義すれば6つの同面積の正方形に囲まれた立体である。この立方体とともに円球体、錐体などは、立体のなかではいわば完全で厳密性のある形態ということになる。このことから、「立体幾何学」や立体的な印象での視覚認識のことをいう「立体視」などに見られるように、接頭語としての広がりを持つようになった。 デザインは、平面=二次元面や、立体・多面体=三次元の空間存在という形態の造形化であることは間違いない。立体造形や平面造形、なかでも平面造形において、あたかも立体的であるかのように見せる手法が、絵画表現や図解、図面などに求められてきた。つまり、デザインは立体造形がその主要な実務的表現行為であるということができる。けれども、多面体あるいは多様体へと立体の概念が拡大しているにも関わらず、デザインでの立体造形には、そうした多面体や多様体の造形と、その手法や手段が組み込まれていない。しかし、今や、コンピュータによって、三次元表現は容易になり、これまでのような立体的な写実表現という職人的な技能からデザインは解放されたのである。それとともに、三次元としての多面体をさらに拡大することを私は試してきた。なぜなら、立体幾何学から位相幾何学での立体認識と立体造形が、コンピュータによって可能になったからである。これまでの立体という概念から大きく変貌を遂げたといってもいいだろう。あるいは、デザイン技術としての立体造形そのものに、変化が起こっているのである。このことをデザイナーはすべからく認識しなければならないと主張しておきたい。