経験的なデータの要因と要因との間での恒常的な関係に基づく推定と定義される。将来に、何らかに起因するであろうことを推測することである。予知が、要素や要因などの組み合わせであり、直感的・主観的であることとは根本的に異なり、科学的な定義となっている。経験的な推測であることから、統計学的な手法で運用される。よって、統計学的な推定値に対する信頼性を獲得することにはなるが、それはあくまでも傾向的であり、推測という予測にすぎない。また、予知と予測の区別が曖昧な将来像も、それらが基づく要素の確実性に論理性があれば、それを予測と呼ぶことができる。また、社会科学的な予測は、社会現象の瞬間的な変移性が付加されるために、自然科学的な予測よりも精度が低いとみなされている。そこで、データ収集とその信頼性がより客観的に求められることとなるが、その精度の源となる統計学は大きく2つの分析をベースとしている。1つは、クロス・セクションデータによる予測と、もう1つは時系列データによる予測である。つまり、同一時点での要因関係の分析と異時点間での要因関係の分析である。自然科学では、マルコフ連鎖モデルが一般的に認知されている。それを社会科学へ応用することで、景気動向、消費者需要などの経済的予測、政党支持率調査や市場調査予測へと拡大している。 デザインは、こうした予測あるいは予測値から演繹的、機能的に導き出されるものではないと私は確信している。予測には要因と言う時間軸があるが、デザインにはデザイナーの直感的な予知力が軸として存在し、私のなかでの経験値として、これこそが最適な予測となる。例えば、地震予知に対する地震予測が、決して成立していないことと同様である。つまり、科学性のある予測といっても、データとなった要因間からの推測にすぎないのである。むしろ、そこには大きくある種の神秘性や非科学性が残存するのだが、直感的予測の方が、はるかにデザイン予測を打ち立てるものであると考えている。確かに、マルコフ連鎖に信頼性と科学性があることは認識している。しかし、要素と要因との間の、同一時点や異時点での判断や評価に基づく推測の科学性をよりも、はるかに、人間の野性的・才能的な直感的推測という予知こそが、デザイン予測であると言いたい。ただし、この認知のための科学性がこれから必要であることは違いない。