本来は飛行機や大型機械類などの実物大模型のことである。しかし、今ではプロダクトデザインでの、形態(外観)模型の実物大だけでなくスケールを拡大・縮小したものなど、モデリング全般を指示する言葉として定着している。クレイや紙、木質系素材、発泡スチロール、セルコアなどによって、デザイナーが自ら制作したモノ、あるいはモデラーという専門家によって制作されたモデル全般をモックアップモデルと呼んでいる。 しかし従来から、そのモデルが。「見本的なモデル」なのか、「手本的なモデル」なのかを規定される事はほとんどなかった。私はモックアップモデルが、ラピッドプロトタイピングによって、これまで以上の精度を持ち、仕上がりレベルの高いものへと進化していることに注目しており、外観形態だけのものから実装モデルに至る全てをモックアップモデルと呼んでいいのではないかと考えている。さらに、そのモデルが「見本」なのか「手本」なのかを突き詰め、提示すべきではないかと考えている。「見本的なモデル」とは外観あるいはそれにくわえて簡易的な実装にデザイナーが関与し、技術を方向付ける者である。一方「手本的なモデル」とは、製造される現物の「お手本」として、仕上げやインタフェースといった細部までをデザインし、完成品のイメージをほぼ決定するべき者である。これは単なるモデルとは区別して、プロトタイプと呼べるものである。 デザインディレクションにおいては、特に、3D-CADやラピッドプロトタイピングの導入によって、デザインの提示できる範囲が拡大し、手本としてのモデルづくりがより容易になり、細部に至るまで、デザイン側の 「使用指示」が可能になっている。さらに、3D-CAD/CAMだけでなく、いずれは4D-CAD(時間制御設計支援)までを導入することになると、私はその研究に挑んでいる。