蛇あるいは竜が、自分の尾を噛んでいる形態や形象をウロボロスというシンボルで呼ぶ。そして、その体の半分は明るく、残りの半分は暗いことから、大地を取り巻く大洋のシンボルを表している。こうした意味性から、万物の中に生息して、万物を結びつける象徴という意味として「宇宙の統一」「全なるもの」までを表している。したがって、その意味はさまざまに拡大した。自己受精・両性具有・豊餞・生命の継続・永遠・自然界の自己充足までを表現するレトリカルなイメージ形象のことばになっている。 元来は、錬金術での原初のカオス=混沌さに対照的な整然とした宇宙を表していた。錬金術師たちは、カオスから宇宙を創造したデミウルゴス(創造神)に自分を凝らしている。ウロポロスの円い姿形は、地球や、閉鎖の原理、これは錬金術の秘訣や秘匿された秘術までを表現するシンボルとして用いられた。それは永遠性までを象徴する形象になっていった。 あえて、デザイン用語としてこの言葉を選択しているのは、美学あるいは審美性を記号論的に、かつこのシンボルをレトリックの形象として単なる図象的に取り扱うのではなくて、科学的である歴史性や錬金術での宇宙性やカオスや秩序についての原初的な形態のシンボル性を確認するためである。おそらく、デザイン造形論やデザインの審美性を「象徴論」として表現する場合に、ウロボロス的という表現が意味することの原意から、その意味の拡大や解釈論から、さらにデザインコンセプトの隠喩的な意味までを認識する用語として取り扱いたいと考えている。いうなれば、科学や技術を基盤としたデザイン造形でのレトリックや記号論的な造形意図の解釈のためには、ウロボロス的という表現は、宇宙性やカオスに対する明らかな秩序としての完成度を象徴する形態シンボルとして引用することが可能である。デザインとアートの関係やデザインの宇宙観を形象的な象徴性の完全さを求めていくシンボルとすることができる。