この技術概念あるいは技術工学は、エルゴノミクス(人間工学)をベースとしており、英国でその専門家を養成するためのカリキュラムであり、設計工学であった。特に、プロダクトデザインのエンジニアリングとして1970年代から進展してきた。最近では、ESR(Ergonomics & Safety Research)という呼称が一般化しているが、これはヒューマン・ユーザーという概念の定義が困難であったからだと考えられる。しかし、アドバンス・テクノロジー、つまり先端的技術領域の範曙においては、人間が機器や機械、装置とともにある環境下での日常的存在性=ヒューマン・ユーザーと位置づけられる。したがって、ヒューマン・ユーザーを科学的な統合性で見つめ直すことは当然であり、これは、人間生活での人間主体の考え方としてヒューマンセンタードデザイン(人間'中心主義デザイン)に連関している。HUSATの具体的な成果は、ISOl3407「インタラクティブシステムにおけるヒューマンセンタードデザインのプロセス」として英国から発信された。私は、こうした設計学のある1つの評価軸がそのまま国際的な制度となることには、反対である.ことを表明しておきたい。なぜなら、このHUSATは特に、コンピュータ実装機器のユーザーインターフェースという一面についてのみの世界標準の構築を目指しただけだからである。それよりもむしろ、ヒューマン・ユーザーという存在と情報環境での機器操作に関して、人間性=人間らしくあるための環境性、さらには自然との調和を大前提とした、先端的設計学であってほしい。デザインにおいては、人間工学、あるいはユニバーサルデザイン、ビューマンセンタードデザイン、さらにインクルーシブデザインというデザインの背景学の進展と、HUSATは確実に連鎖している。そういう意味では、科学と技術が、人間にとって、環境にとって、それぞれの存在性をより明確に進展させる学問としてHUSATがテーマとした領域は重要だと考える。