ヒューマン・ファクター・エンジニアリング【Human factor engineering】

  エルゴノミクスとは、「人間工学」と訳語され、人間と機械との「使い勝手」を探求する工学領域であり、第一次世界大戦当時に生まれた学問である。この学問が目指したのは「効率性」と「安全性」であり、軍事技術開発の背景となった。第二次世界大戦後、ヒューマン・ファクター・エンジニアリングという、人間エ学に対するもう1つの呼称が現れた。この工学領域の目標は「快適性」「健康」「安全」という概念に向かって、人間と機械との相互関係を探求することであり、人間と機械がどういった環境下であれば、この3つの概念の調和と秩序が保てるかを問うものであった。エルゴノミクスでの効率性とは、労働とその成果における迅速性や精確性を求めることであり、ヒューマンエラーをいかになくすかということでもあった。つまり人間の機械操作における安全性の確保を設計工学的に探っていくというものだった。一方、ヒューマン'ファクター・エンジニアリングにおいて重要視されたのは、働きがいや生きがいであり、効率を上げるには「快適な操作性能」が必然であると考えられた。さらに人間の「健康」も不可欠であり、快適性と健康の大前提として安全があった。こうして、人間工学は、エルゴノミクスとヒューマン・ファクター・エンジニアリングの'両面が蓄積された学問となったのである。その後、テクノロジーの大きな進展とともに、人間とマシン・インターフェースを取り囲む環境が大きく変化し、人間工学という学問的領域の焦点化と強化が求められることになった。結果、ヒューマン・ファクターとしての、生体性・生理性・心理性をより重要視し、それらとマシン・インターフェースとの間に適合性を見出し、把握することで、人間工学が設計学へと統合されていくと考えられるようになった。   

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