このことばは、そのまま「字面」と訳すことができる。タイプとは、何らかの共通の特徴を持つ1つのグループを意味している。この基本的な意味から、類・型・様式などを表わすようになり、そこから典型や見本、実例というような意味の拡大が起こった。タイプフェイスとは、印刷やタイプライターの活字、写真植字の文字や、共通の特徴を持つ一群のパターンにまとめられる書体の字面を指示している。そして、活字の字面から、さまざまな書体、あるいわ書体そのものを意味することばになった。 グーテンベルグによる活版印刷の発明後、金属活字と印刷技術の進歩とともに、タイプフェイスには多様な形態が表れ、その数も膨大なものとなった。時代が要請する文字表現と文字表示にも大きな変化があり、その時代を表現する書体の歴史がある。また、古典的な書体の復刻や新書体の考案は常に行われている。バウハウスや構成主義、ダダイズムでのサンセリフ書体、セリフとサンセリフを統合するような書体ファミリーの登場、あるいは、マルチプル・マスター・タイプフェイスというような洗練された形式などは、タイプフェイスの大きな進化であったと考えられる。 また、さまざまな言語間の関係性で考えると、民族や社会が国際化するなかで、それぞれの言語の形態と字面が、多岐にわたって融合していくようになる。特に近年は、コンピュータの登場による、いわゆるデジタルフォントによって、書体の字面は大きく変化してきた。デジタルフォントは、コンピュータ出現当初には、ビットマップ形式であったが、現在では、アウトライン形式が主流となり、タイプフェイスの拡大縮小などや、タイポグラフィそのものを変革させる大きな要因になっている。これはDTP (Desk Top Publishing) が実現したからである。そして、今後のタイプフェイスの進化には、印刷から映像まで、つまり静的なものだけでなく、動的な字面のあり方を基本とする、インターフェース的なものとしての書体デザインが求められる。