通常は自然科学のことであり、ラテン語のscientiaは「知識」全般を指し示す言葉であった。が、この意味そのままにフランス語のscienceとなり、17世紀には英語圏でscience、ドイツ語ではwissenschaftという訳語が与えられた。日本では「科学」と訳された。 本来は「知識」全般を意味したが、各国語ではその意味内容に微妙な違いがある。「知識」という一般性から、ある特別な知識という専門的な意味性を持つようになったのである。これは12世紀以降のアリストテレスのラテン語訳稿本で使われていたscientificusという形容詞の意味から派生したと言われている。それは、限定され、体系的で正確でしっかりとした知識という意味であった。したがって、英語圏では、ユークリッド幾何学のような演繹的に組み立てられた知識体系や、実験や観察から得られた知識を指し、これが今日では学問という意味に繋がっている。それを受けて、研究活動を職能とするscientistという言葉が1830年代に作られた。研究領域の自立化や独立化とともに、人間や社会についての学問としての知識体系にまで及ぶ拡大と集約がこの言葉の概念となっていった。こうした知識概念の拡大と集約が、いわゆる応用科学的に制度化されることで、知識による技術、あるいは参照のための学問体系となる系譜をたどることになった。この経過の中では、知識価値あるいは学問として、客観的な知識体系の価値は、その価値の確認そのものが知識批判として体系化されるというように還元的であったり、反証的な側面がかえって強調される領域にまで拡大している。 そこで、デザインとサイエンスの関係は、デザインとして表現される内容を裏付ける知識というよりは、むしろ知見や見識としての関係で結びついてきたと考えることができる。しかし、サイエンスそのものをデザイン対象とする手法は、社会的に制度化されたサイエンスをさらに強固に支援することもでき、もしくは批判的に解体することも可能である。デザインとサイエンスの関係を突き詰めることは、デザイン理念そのものの再構築のきっかけになるのではないかと考える。