手先の技術や技能、技を意味する言葉として登場する。そして、その技能や技術が時代的に進歩し、その結果として、技術表現されたモノまでを包含する意味が加わることで、クラフトの意味は多様に展開することを指示することになる。 まずは、手先の技能や手工業や工芸という意味は、技術の高度化や細密化によって美術工芸までを意味する。この意味の転用は、さらに細工的な狡猾さにまで至れば、悪巧みや悪知恵まで意味は拡大する。デザインという言葉も、同様に謀略や悪巧みが付着しているようなものである。細工でき得る技能集団を意味することで、組合や職能集団という意味まで発展する。また、技能を表現したモノそのものを指示する場合には、時代的な状況によって生み出されたモノとして17世紀には船舶、小舟まで意味することに至る。 デザインの範疇を決定する用語としてのクラフトあるいはクラフトデザインは、デザイナー自らの技能によるデザイン成果として、工芸を現代化した表現用語として採用される。が、すでにデザイン成果をデザイナー自身の技能と綿密に組み合わせられたデザイン表現の対象とする時代は終わっている。むしろ、素材の加工方法や表現技法に、歴史的な工芸的手法や手作業的なコンテクストが顕著である場合には、クラフトデザインという呼称が使用されることが多くなっている。それはもう一方では、例えばコンピュータ運用によるデザイン成果であっても、その表現に、工芸的な造形要素や、デザイン手法が手作業を感じさせるモノについては、細工的な意味性を加味するためにクラフトという表現が意図的に利用されている。 この言葉は極めて人間の手先の細工的な技能を原意としているために、恣意的な意味性を意図して用語的な意味性を残していくべきではないかと考える。あくまでもデザインにおけるクラフト性とは、何を意味しているのかを問題提起する用語として、再度、この言葉の意味の検証を明白にするべきだと感じる。