グラフィックという言葉がデザインの領域を設定するまでには、その原意からの解釈の意味の拡大と、意味性の限定が交差し歴史的な変遷を重ねてきた。いわゆるグラフィックデザインというのは、平面に表現された視覚的な造形書写方法や描画による構成形式を意味している。ラテン語を原意とするグラフィックは、書写することであり、その書写から描画までには、「いきいきと描く行為」による表現を意味していた。書くこと、写すこと、描くことという行為によって、平面上に評価された造形は視覚的に認識される。こうした視覚認識は、これまでは平面、つまり二次元上でのデザイン造形行為そのものがグラフィックを成立させると定義されてきた。しかし、表現された対象を表現手法や表現行為から読み取るのではなく、視覚的な対象が意味していることを認知することから、表現のあり方、すなわち平面デザインの意味性は、書写性や描画されて伝達される機能性や可能性が求められることになった。 かつて、図案という訳語には、グラフィックの核心的な意味性が明確だったのではないだろうか。表現する形式=図の情報性や表現された内容=案の情報性が、認知されるためのデザインをグラフィックデザインと定義するのはすでに古典的かつ限定的ではあるが、表現された意味の情報性を見事に意図している。認知する対象の図案性=グラフィック性が問いかけられることで、情報の意味性が認識として求められることに至る。情報化とグラフィック表現の関係は、表現形式と表現内容によって情報をグラフィック的に表現する、あるいはグラフィックとして情報化することで、表現された意味性は選択性と理解性を強化することが可能である。よってグラフィックデザインは、情報化手法では重大なコミュニケーション手段となり、それは認知方法としては、すでに視覚的な認識にとどまらない。グラフィックデザインは視覚的であることから解放される時期を迎えてきていると考える。