ワーキングモデル【Working model】

   試作品のことである。基本的には技術使用に基づく設計によって、どの程度まで予測通りに制作されているかを確認するための製作品のことである。それは実働モデルであり、実働サンプルをも総称している。実働とは、機構・メカニズム・回路などの実装構造が、実際的・実務的に動作することであり、その機能性や性能性を果たしているかどうかを試すことのできるモデリングの成果物が、実働モデル=ワーキングモデルである。ただし、ワーキングモデルは実装状態の機構そのままのモノにすぎない。しかし、「ワーキングモデル=実働サンプル」は、スタイリングデザインそのものに実装された機構が実働する、いわば「手本」であり、単なる「見本」ではない十分な性能を発揮できるものになっていなければならない、と私は定義している。
 デザインにおいて、例えばモックアップモデルは、スタイリング=外装衣装、外観的な視覚に適うだけの試作品でいい。しかし、最終的にはデザインの手本であるべきワーキングサンプルまでを制作するほうがデザインの意図を明快にできる。つまり、デザインを提案していくプロセスにおいて、ワーキングモデルからワーキングサンプルまでをその中に配置しておくことが重要である。そして、デザイナーは、外観、つまり表皮だけの意匠に止まらず、内部構造やメカニズム、実装回路に至るまで全体的に提案できることが重要だと主張しておきたい。これは、デザインを具体化、具現化していくためには、モックアップモデルだけでなく、ワーキングモデルからワーキングサンプルまでの製作を目標にしてほしいということである。その最大の理由として、次の2点を挙げることができる。デザインが一般的に最も誤解を受けているのは、「デザインとは外装・外観設計のみ」だということ。さらに「技術と意匠とは別物」という印象や認識を与えてしまっていることである。っこうした大きな誤解を覆さなければならない。したがって、デザインが技術を主導し、その成果が外観、意匠として具現化されていることをワーキングモデルやワーキングサンプルにおいて、デザイナーは言及し、指し示すべきである。
 工学的な設計論に基づくワーキングモデル以上の、デザインによるワーキングモデルが求められていることをデザイナーは自覚しておかなければならない。   

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