日本語では、「超微細化加工技術」、あるいは「極微科学の技術化」という訳語が当てはまる。超微細化とは、nm(ナノメートル)=10億分の1mという単位精度の加工や計測を扱うということである。この技術はマイクロ・マシン(超小型の機械)によって、10mm3以下の大きさの計測と加工技術の実現を目指しており、これは最先端の科学と技術の1つのシンボルあるいはコンセプトであると言える。 現在、工業技術的に実現している最小加工寸法は90nm程度である。具体的には、例えば30年前、1つの半導体チップに実装されるトランジスタの数は2000個程度だったが、2000年には、同じ大きさの半導体チップに4千5百万個が実装されるようになった。これは明らかに、超微細加工技術の驚異的な進化の実例である。このようにナノテクノロジーとは、ナノ単位までの超微細化を実現し、ナノ粒子、分子、量子、あるいはDNAなどによる素材開発とともに、新しい技術開発を目標とするテクノロジーの総称である。そしてテクノロジーは、IT、バイオテクノロジー、環境という3つの分野と強い連関性がある。 ただ現状では、一般に喧伝されているのとは違い、ナノテクノロジーにおいて実現されているのは、ナノ粒子によるコーティングや塗装技術という程度にすぎず、イメージと現実との間に大きなギャップがある。ナノテクノロジーとはブーム的呼称であるという意見もあり、この言葉には理想と幻想が取り巻いている。しかし、10年、20年という中長期の技術開発目標として、超微細加工技術によって実現され得る、可能性の高い領域であることは間違いない。また、ナノテクノロジーとデザインとの融合という観点から、コンピュータによるデザイン手法とともに、ナノテクノロジーが対象とする分野へのデザイン導入を目指す必要があると考える。