都市は、明治中期以後の言葉である。市や町という行政上の言葉とは、全く別の概念である。英語のtownやcityは、集落の規模的な単位を表しているが、日本語の都市という概念に対しては、urban areaが最適な訳語だと言われている。 かつて人間の居住形態は「集落」(古代語では聚落=人の集まるところ)と呼ばれていた。集落には、土地と直接的に関与する産業を営む人々が居住する村落と、土地とは関連しない産業の従事者による都市的集落に分別することができた。そして、都市的集落の規模によって、小型の「町」と大型の「都市」に分けられた。また、かつては、生活様式の相違により、村落社会と都市社会が社会学的に区別されていたが、そのような相違が消失した現在では、村落と都市とを対立した概念として扱わなくなった。こうした定義の変遷は、権力支配と居住形態の歴史に遡及して確認することができる。 近代では、都市の機能分化によって、例えば、生産都市、交易都市、消費都市、学術都市、観光都市、さらには、衛星都市、住宅都市など、その特徴に基づく呼称が多様となってきた。そこで、都市の基本機能(basic function)を有する地域を総合都市として考え、都市の中心から次第に市街地を形成する都市地域と、都市の諸活動を補完する都市圏とする考え方が一般的になった。 そして、都市そのもののデザインというよりは、明らかに、都市環境のデザインという見方が必要となってきた。建築による都市デザイン、都市計画による都市デザイン、土木建設による都市デザイン、そして、環境デザインによる都市社会の構造化が、デザインテーマになっている。都市環境を決定づける新たなテーマは、高密度に情報化されていく都市構造のあり方そのものであり、それが新たなデザイン課題として浮かび上がってきている。それは、人口集中による巨大都市の出現と人口の過疎化現象による村落社会の消失が同時進行しながら、さらに情報格差による集落形式の相違という問題が発生したからである。また、環境デザインの対象として、都市集落の新しい進化とともに、都市環境の保全や歴史的街区の保存という市民意識への働きかけがあり、そのグランドデザインとして都市が構築されて存在しているのである。