意図【Intent】

  何事かを成し遂げようとする狙いがあること。そうした狙いを実現しようとするときに、その目的や目標として考えている事柄のことである。  デザイン意図という場合は、デザインする対象に対して、デザインコンセプトとして掲げたことの目的や目標を、どのように造形表現しようとしているかを提示する事項のことを意味する。それは、社会的、時代的、経済的、文化的などの価値づけの狙い、もしくはデザイン的な効用と効果への明確な意志決定をコミュニケーションするための言説となる。 したがって、例えば造形言語というデザイン造形の決定は、デザイン意図に基づいた表現や、デザインされた意味性が造形から可読できなければならない。それは意図そのものをデザイン課題として設定するという手法にもなり得るわけだ。 ところがデザイナーの知見や判断にとっての問題は、デザイン意図とデザインコンセプトとの関係を整理することができないままに、デザインコンセプトをデザイン意図と混同し、その結果として、デザインによる問題解決、その造形デザインのための造形意図をデザイン意図から引き出せない製品やデザイン成果ができあがることが起こりうる。これはデザイン意図を、問題設定時に意識するのか、デザインによる解答の成果を伝達するために仮説的に設定するのか、という問題設定か解答決定かということのデザイナー自身の認識論理に繋がっている。  デザイン成果を記号論的に、意味されること、意味すること、という論理と重複させてみれば、デザイン意図が、意味することとデザイン意図で意味されることをどこまで伝えることができるかということである。少なからず、意図はデザインコンセプトの意味することと意味されることを、デザインすることの統合的な意味論にする必要があるということだ。そのためには、デザインコンセプトのボキャブラリーの意味と、最も説得性や納得性を投げかけるシナリオ的な語り方で構成されなければならない。

Copyright © 2024 Kazuo KAWASAKI. All Rights Reserved.