コンピュータにとってプログラムは必要不可欠であり、プログラムによってコンピュータは機能する。コンピュータをハードウェアと呼び、その対応する言葉として、ソフトウェアという対語が発想された。オペレーティングシステムやプログラム言語など、機器に対応する周辺すべてをソフトウェアと呼ぶ。コンピュータの進化やその機能性の拡大と並行して、ソフトウェアの語義も拡大した。今やプログラムだけに限らず、例えば使用説明書や文書類までを包括するまでになっている。これらは当初、コンピュータの付属品として供給されていたが、次第に独自の重要性を持つようになり、ソフトウェア産業では1968年頃からソフトウェア工学なるものが提唱されるようになった。また最近では、コンピュータの進化とともに、ハードウェアとソフトウェアの境界が不鮮明になりつつあることも事実である。かつてはソフトウェアで処理されていたことがハードウェアに組み込まれたり、ハードウェアの内部にもマイクロプログラムというソフトウェアが構成されるようになってきている。 日本語においても、当然ながら、ハードウェアとソフトウェアの訳語づくりは試みられたが、そのままカタカナで表現されている。中国語では、ハードウェアは硬件、ソフトウェアは軟件といわれている。この両者は、ハードウェアを文明、ソフトウェアを文化というような対語的な換喩までが可能なほど、広義な意味を獲得している。デザインにおいても、デザインそのものの表現をハードウェア的と指し示し、そのデザイン展開、デザインによる成果の領域周辺までを、デザインのソフトウェアと呼ぶことができる。こうしたことから、ソフトウェアとしてのデザイン、あるいはデザインというソフトウェアとは何か、どうあるべきかということも、デザインの効用と効果においては、充分に論議の対象となっている。