英語のsimulateは、「まねをする」「ふりをする」という意味の動詞であり、その名詞がsimulationである。しかし、通常では、現実世界に存在するシステムではなく、まだ非存在あるいは不在なシステムをモデル化して、存在しているという仮定のもとで体験するという。つまり、疑似体験のためのシステムのモデル化とそのモデルによる実験という意味である。 このモデル化の手順では、仮想であるがゆえに、より実験の正確さが求められる。実験の目的を明確にしてモデル化したとしても、モデル作成にあたっては、現実の現象を詳細に観察・分析し、当面の目的に重要と考えられる要素と要素間の関係や、システムを支配し制御していると考えられる法則性の確認が必要となる。関係が希薄な要素は取捨してかまわない。このような手順によって、モデルの妥当性が明白になったときに、疑似体験は限りなく、現実体験に近いものとなるという確信に至る。ところが、要素の取捨選択が必ずしも客観的でない場合には、モデルの作成者の主観性への信頼感が不可欠となる。これは疑似体験のためのシステムがどれだけ説得性のあるモデルや実験になっているのかという判断や評価の機軸に繋がっている。 最近では、コンピュータの運用によるシミュレーションが進化してきた。現象のモデル化をする場合に、イベント中心、プロセス中心、アクティビティ中心という3つに大別して疑似体験のためのモデル実験がプログラム化できるというところまで進歩したと言われている。このコンピュータ支援による装置をシミュレーターと呼ぶが、シミュレーターは、人工現実感、または仮想現実を得るための、シミュレーション手法の1つとして、現在では信頼度が高まり、社会的にも認知されつつある。 デザインにおいても、その成果をシミュレーションするという手法に、コンピュータの運用とその手順作りの開発が求められている。