本来の数学用語としての意味性が、この言葉を最も明確に定義している。ある空間が閉鎖されたものである場合、その閉鎖空間(閉集合と言う)全体の中で、他の有限である要素との関係において、コンパクト性が定義される。この定義は次の3つに集約されている。閉集合をどれだけの有限個で満たす、あるいは覆うことができるかということ。無限の部分集合ならば、それらは必ず1つの集積点に収まるか、任意に取りだした点列から、1つの点に収束する部分列を取り出すことが可能であること。閉集合は空ではなくて、どれだけの閉集合があっても、それらの共通部分は空ではない、ということ。これらの定義が成立する場面をコンパクト空間と定義している。 こうした数学的に完結された定義を概要すれば、COM=共に、PACT=堅く締めるという原始的な意味がより明確になってくる。つまり、より狭く閉塞された空間の中で、密集する要素や、ぎっしりと詰め込んだ状態を表現する言葉になっていることが理解できる。そこで、一般的には、体積的により小さく、その空間に凝縮された中身が詰まっていることになる。 デザインにおいて、「コンセプトとしてコンパクト」という言葉を例に取ると、それはどれだけ省スペース化し、なおかつその空間的な造形に凝縮された実装によって、より合理的で、機能的に優れた性能にできるかと言うことになる。コンパクトであることを成立させるためには、凝縮性そのもの、つまり構成要素が構造としてさらに密度性や閉鎖された空間性を確保していなければならないということになる。 技術的な集積度や凝縮実装性において、コンパクト性がますます求められることになってくるはずである。その場合のコンパクトという意味を理解するには、数学的なコンパクト空間の定義に立ち戻る必要がある。なぜならば、技術そのもののコンパクト性は、ナノテクノロジーのように、すでに視覚的には捉えられない技術の集積が目指されているからだ。コンパクトなデザインは時代的な要請になってきている。