広告【advertisement】

  この言葉は、1872年(明治5年)頃から新聞紙上に散見されるが、1887年に一般的になったと言われている。江戸時代には振売(行商)が引札と呼ばれる印刷物、今で言うチラシを配っており、これが新聞広告に発展したとされている。また、英語のadvertising (advertisement) の原語はラテン語のadvertereで、「振り向かせる」とか「注意させる」という意味であった。 いわゆる広告という意味は、1655年11月にロンドンで発行された『Mercurious politicus』というニュースブックで初めて用いられたという定説がある。一般的には、商品、これは有形のモノだけではなくて、サービスやアイデア、あるいは情報など、取引対象となる客体やその供給元・提供元である企業・組織・行政・あるいは政府に至るまでが、好意を持って価値観を感じ取れるように対象に訴求する活動全体のプロモーションを意味している。政治・政策的広告という意味にもなっている。 広告と道義的な意味を持つ「宣伝」という語は、ある主張や商品の効能を多くの人に説明して、理解や共鳴を得る広報的な活動を意味していて、これはプロパガンダとして広告よりも広い意味性を持っている。 広告においては、訴求するために用いる媒体との関係性こそが、最も重要なデザインの表現形式となる。つまり、メディアという形式と、広告の内容の表現デザインという認知形式によって、「どのように共感を得るか」ということが、広告デザインの主要目的となる。広告の内容は大衆意識に大きな影響を与えることから、特に情報操作の危険性を内包している。また、広告主や媒体選別、媒体確保、さらには広告表現に至るまで、その仕組みはプロモーションシステムとして大きな経済システムと連関し、文化の消費構造になっている。結果、広告とデザインの関係は、意識操作という社会構造におけるデザインの本質論に繋がる問題であるとさえ言える。   

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