ギリシア語で「道がないこと」を原意とする。出会ってしまった難関や難問のこと、問題を解決していく過程で立ち往生を余儀なくされることを意味している。アリストテレスは、問題に対して、2つの合理的に成立してしまうが相反する答えに直面する、という論理的な難点であると定義した。 デザイン的に、この言葉を用いていくとするならば、デザインによって問題解決を図るうえでの無理難題ということである。しかし、デザインにとってのアポリアというのは、解決不可能とさえ考えられる問題や課題に対して、より積極的に、回答と解答を社会提案として差し出していく姿勢であると定義したい。それは、すでに20世紀末に人類が直面した、地球規模で生き延びていく方法全体がデザインに課せられているといっても過言ではない。
例えば、ユニバーサルデザイン、サスティナブルデザイン、エコロジーデザインなど、デザインにとって、こうした課題や問題は、実際には相当にアポリアであるということができる。しかし、デザインの本賀において、問題解決による創造活動は、社会に対する職能的責務であり、かつデザイナーの職能人としての態度であるべきと考えたい。また、こうした問題以前に、デザインが産業革命以来、理想主義を具現化する手法として意図してきたことよりも、未だにデザイン振興策によって、デザインの効用と効果を、商業主義的に欲望を喚起する手法と考えることで、経済構造に閉じ込められてきたことこそ、デザインのアポリアと考えることができる。また、デザイン行政として、政治と宗教に対してのデザイン導入ということも、問題という以前に回避でしかなかった。あくまでもデザインの理想主義を貫くならば、あらためてデザインのアポリアとは何であるのか、何がデザインのアポリアになってしまうのかを確認していくことが問われる。21世紀初頭のデザインの問題となっている。