第2回「石黒 浩」氏
2018年初回のKK適塾として、アンドロイドロボットで著名な石黒浩氏をお迎えしました。先立ちまして、本講座寄附企業の一つである大日本印刷株式会社様からは、情報イノベーション事業部 C&Iセンター 第1マーケティングコミュニケーション本部 ビジネスインキュベーション部 秀英体開発グループ 伊藤正樹氏より、「秀英体」という大日本印刷が有している文字フォントについてお話いただきました。印刷からデジタルに移行する中で、読みやすさを追求してきたその経緯をご説明いただきました。続いて主催者である川崎より、「つくる」という日本産業界の根幹とも言える言葉の説明を通して、これからの情報社会に求められている理解を概論として講演しました。特に、現在の企業では「製品と商品」という言葉の使い分けが極めて曖昧であり、企業のトップでもその言葉を正確に理解している人はおらず、それが、今の日本のものづくりに影響を与えているとのことです。また同様に情報という言葉も、本来の情勢報告という森鴎外の言葉が捻じ曲げられ、間違った方向に向かっているとの概説がありました。
対談は、アンドロイドの皮を剥がす行為がなぜ人間らしく見えるのか、という話題から始まりました。石黒氏が講演の中で話された制作過程に関することですが、人間は不気味なものに惹きつけられるのではないか、という話から、想像を掻き立てるという内容へ移りました。石黒氏はデザインは「デザインは人の想像を喚起するもの」と考えているそうで、余計な情報を削ぎ落としシンプルにしていくことにより、足りない部分を見る人に補完させるということを考えているそうです。人間の脳は足りな情報をポジティブに補完するそうで、電話越しの相手は綺麗な人だと考える、という例からお示しいただきました。川崎はデザインとアートの違いを、客観と主観によって別れることを説明し、自身が行って来たデザイン賞の審査時の経験なども絡めて話を展開しました。最終的には「意図・欲求」を目指すこれからのロボット開発が、最終的な問題に対する解答を目指すものであるとしてまとめました。
大阪大学 特別教授・ATR石黒浩特別研究室
室長1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻教授・ATR石黒浩特別研究室室長(ATRフェロー)。工学博士。社会で活動できる知的システムを持ったロボットの実現を目指し、これまでにヒューマノイドやアンドロイド、自身のコピーロボットであるジェミノイドなど多数のロボットを開発。2011年大阪文化賞(大阪府・大阪市)受賞、2013年大阪大学特別教授。最先端のロボット研究者として世界的に注目されている。